赤外線は肉眼では見ることのできない光で、熱作用があることで知られています。赤外線は1900年頃から注目されはじめ、1930年を過ぎる頃には幅広い分野で研究が行われるようになり、現在では様々な産業で利用されています。ここでは、そんな赤外線の概要と種類についてまとめました。
赤外線は電磁波の一種
赤外線は電磁波の一種で、波長が長いことが特徴です。赤外線の概要と利用シーン、利点と欠点があるのかについてまとめました。
赤外線とは
赤外線とは、780～10万nmの波長域の光のことを指します。なお、視認できる可視光線の波長域は380～780nm、日焼けの原因になることで知られている紫外線の波長域は10～380nmです。そして、赤外線の大きな特徴は強い熱作用があるということです。このことから、赤外線は「熱線」とも呼ばれています。
そして、赤外線の熱作用に関連する現象が「伝導」、「対流」、「放射」の3つです。
「伝導」とは熱エネルギーが接触している他の物体に伝わる現象で、物体の種類によって伝導率が異なります。
「対流」とは熱エネルギーが気体や液体によって伝わる現象で、密度差が原因で起こる「自然対流」と物理的作用によって発生する「強制対流」の2種類に分けられます。
「放射」は電磁波によって熱エネルギーが伝わる現象です。日差しを浴びると暖かく感じるのは、太陽が電磁波を放出しているためです。
ちなみに、これらの現象が単独で起こることは多くはありません。ほとんどの場合は、2つ以上の現象によって赤外線特有の強い熱作用が生じます。
日常、産業での使用状況
赤外線の代表的な活用例が「ヒーター」です。一口でヒーターと言ってもその種類は多岐にわたり、ハロゲンヒーターや遠赤外線シーズヒーター、セラミックヒーター、石英管ヒーターなどがあります。
また、赤外線ヒーターの用途も塗装乾燥やプラスチック成形、グルーコーティング、食品の殺菌や熱安定化、スクリーン印刷などがあります。赤外線は、日常生活や産業において幅広く使用されているといえるでしょう。
赤外線の利点・欠点
赤外線の特筆すべき利点は「伝熱効率が優れている」ことです。短い時間で加熱することができるためエネルギーの無駄が少なく、さらに炉を小型化できるのでスペース効率もアップします。また、熱のコントロールがしやすいこと、クリーンな環境を保ちやすいことも大きな利点だと言えるでしょう。
その一方で、欠点がないわけではありません。前述したように、赤外線の伝導率は物体によって異なるため、アルミや金などを使用するとほぼ反射してしまいます。また赤外線は直進する性質があるため、複雑な形状の製品に応用する場合には対応を工夫しなければいけません。
赤外線の近赤外線、中間赤外線、遠赤外線の違いと特徴
赤外線は波長の長さによって近赤外線、中間赤外線、遠赤外線の3つに分けられます。可視光線に最も近いのが近赤外線で、波長は0.7～2.5μm。中間赤外線はそれよりもやや波長が長く2.5～4μm、遠赤外線は電波に近い4～1000μmです。ここでは、これら3つの赤外線の特徴や活用方法について解説します。
近赤外線の特徴と活用方法
近赤外線は波長が短いため、肉眼では見ることができないものの、可視光線に近い性質を持っており、赤外線通信や赤外線カメラなどで使用されています。
また近赤外線を照射したときの吸光度によって成分を算出できるため、果実糖度計などにも利用されています。
中間赤外線の特徴と活用方法
中間赤外線は近赤外線と遠赤外線の中間の性質を持っており、近赤外線として分類されることもあります。化学物質の同定に用いられるほか、石英管ヒーターなどにも使用されています。
遠赤外線の特徴と活用方法
遠赤外線は、ガラスの透過限界波長よりも長い波長を持つ赤外線です。物質に吸収されても他のエネルギーに変換されることはなく、直接原子や分子の振動エネルギーおよび回転エネルギーになることが特徴です。塗装の焼き付けや乾燥には近赤外線よりも遠赤外線が適しており、透明なプラスチックの成形にも利用されています。
なお、近赤外線、中間赤外線、遠赤外線は必ずしも単独で使用されているわけではありません。それぞれの赤外線の分布を検討し、最適な赤外線加熱を行う必要があります。
幅広い用途で活用されている赤外線
赤外線は電磁波の一種であり、可視光線や紫外線よりも長い波長を持っています。その特徴は強い熱作用で、電熱効率が良いなどたくさんのメリットがあります。
そして、ここでご紹介したように赤外線は日常や産業で幅広く利用されています。ヒーターはもちろんのこと赤外線通信などにも使用されており、私たちの生活にとってなくてはならないものだといえるでしょう。
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