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イカには青色の集魚灯!漁業と利用される「走光性」と光の波長の関わり

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2020/10/02

イカには青色の集魚灯!漁業と利用される「走光性」と光の波長の関わり

古くから、集魚灯は夜間漁業において世界中で使われています。水上灯(移動式・固定式)や水中灯など様々な種類の集魚灯がありますが、いずれも魚類などの光に集まる「走光性」を利用しています。イカやアジなど、光の波長によって行動が異なることも多く、現代の集魚灯は捕獲する魚の種類によって違います。

そこで今回は、魚の「走光性」と集魚灯の仕組みについて解説します。イカが青色に集まりやすい理由を知らない人は、ぜひチェックしてみてください。

魚や虫の走光性とは

生物にはある外部の刺激に反応して集散する「走性」という習性があります。走性を促す現象には、臭いなどの化学物質(化学走性)や温度(温度走性)、磁気(磁気走性)など様々です。そのなかで光に向かって移動する習性を「走光性」といいます。一般的に走光性は、光に集まる「正の走光性」がイメージされがちですが、光を避ける「負の走光性」も存在します。 集魚灯は魚介類の正の走光性を利用した漁業に使われます。

魚介類のほかにも有名な走光性を持つのが、蛾や甲虫などの昆虫です。「飛んで火にいる夏の虫」ということわざがあるほど、古くから知られている習性ですが、実は走光性のメカニズムは十分に明らかになっていないのです。また、魚介類でもすべての魚類に正の走光性があるわけではありません。一般的に集魚灯を使った漁業の対象になる魚介類の一例を以下で紹介します。

 ■正の走光性が見られる魚介類(例) サンマ、イワシ、カタクチイワシ、マアジ、サバ、コノシロ、ニシン、イカ、カツオ、トビウオ、イカナゴ、クルマエビ

このように走光性を利用した漁業は、幅広い種類の魚で活用されているのです。ちなみに、ソウダカツオなどの光から離れる「負の走光性」が見られる魚類も明らかになっています。

走光性と輝度の関係性

集魚灯の性能の大きな判断基準に、光源の明るさを示す「輝度」があります。従来は集魚灯の光源出力が大きいほど漁獲量が増大すると考えられていましたが、先述した「正の走光性」が見られる魚類のなかでも、それぞれ好む光の明るさはそれぞれ異なることが明らかになっています。

さらに、同じ光の下にずっと定着する魚や入れ替わり接近しては離れる種類もいるなど、光に集まる行動そのものも個体差があります。

例:サンマの水上灯と水中灯の反応実験

サンマに対する水上灯と水中灯の反応実験では、水上灯の場合、光源の真下の2mくらいに密集して長い時間定着しました。一方、輝度を落とした水中灯では、サンマは光源から離れて回遊し、水上灯よりも輝度が弱くて光の揺れもわずかにも関わらず、敏感に反応して滞在時間も短かったという結果が明らかになっています。

あくまで一例ではありますが、現代の集魚灯はこのような魚の習性に合わせた光源の輝度や波長を調整することで、その効果を高めているのです。

 ※出典:「魚類の対光行動とその生理」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/suisan1932/38/8/38_8_907/_pdf

走光性を高める集魚灯の特徴

走光性を効率的に高めることは、単に漁獲量を増加させるだけでなく、光源に必要な燃料費を下げることによる「省コスト化」など多くのメリットが得られます。

イカの走行性と集魚灯

イカ釣りは集魚灯を用いる代表的な漁業です。従来、メタルハライドランプ(放電灯)などを使った大光量・大消費電力化が中心だったイカ釣りですが、近年はLEDの水中灯の導入が進められています。独立行政法人水産総合研究センターが作成した「いか釣り水中灯利用技術に係る研究開発の現状」では、LED水中灯の色や輝度による漁獲量の変化について解説されています。

 日本近海でのアカイカは、昼夜の操業がありどちらでも集魚灯が使われます。昼操業において、600Wの白・青緑・緑・青の4色で漁獲量を比較したところ青緑・青が効果的という結果が明らかになっています。従来のメタルハライドランプとの漁獲量を比較すると、青色LED水中灯を利用した結果、同等以上の漁獲量を記録。さらに点滅させると漁獲が増えたケースもありました。一方、夜間操業では100KWのメタルハライドランプと600KWのLED水中灯を組み合わせることで、従来よりも省コストで同等以上の漁獲量を得られています。 このように単純に光源をメタルハライドランプからLEDに変えるだけでは従来と同じ漁獲量が必ず得られるわけではありません。

ただ、適した光の波長や輝度などが今後解明されることで、それに最適な集魚灯が開発されればコスト増や漁獲量の減少などが課題になっている漁業の大きな進歩になることは間違いありません。

走光性に適した集魚灯の開発が進められている

先述したように走光性のメカニズムについては、まだ解明されていない部分も多く、メタルハライドランプ・LED・自然光で同じ輝度(輝度)でも反応が異なる可能性も拭い切れていません。特にイカ漁ではLEDの効果が弱い傾向が見られており、各機関やメーカーがその研究と適したLED集魚灯の開発に取り組んでいます。
これらの試みが実を結べば、燃料費の高騰が続くイカ漁などに新しい革新をもたらせると期待されています。

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