素材と空間の調和にこだわりながら、スケルトンデザインや新しい素材の組み合わせなど、革新的なアプローチを取り入れたデザイン性と機能性を兼ね備える建築手法で高い評価を受けるninkipen!(ニンキペン)一級建築士事務所。同社が得意とする「現し」の空間で多く利用されるアルミ素地スポットライトについて、その選定の狙いについて、代表の今津康夫氏に聞いた。
多くの設計者に共通すると思うんですけど、やっぱり素地好き、素材色好きですね。色は無限に着色できますけど、木であっても真鍮であっても、持っている素材のそのままの色ってすごく魅力を感じます。でも、アルミ製品って塗装されたモノが多いですよね。アルミには本来、成形時にできるムラがあって、素材好きにはこの表情や質感がたまらないんです。
設計コンセプトとして、建築資材がお互いの素材感を主張してくれるというか、混在しながら一体化していくイメージを持っていて、コンクリートや鉄骨構造の天井を現し構造にすることが多いです。必然的に設備も現しにすることで、全体の一体感を持たせることができると考えています。照明器具も設備のひとつですから、アルミ素地のスポットライトはその一体感を作るために選びやすいですね。 コンクリートもアルミも、一見すると無機質ですべて同じに見えますが、一つひとつが独自の素材感と異なる表情を持っていて、同じ空間で馴染みやすく、それぞれに主張してくれます。
ただ素材であっても、例えば「木」を基調とした柔らかな空間では、アルミの印象はちょっと強すぎるかもしれませんね。全体の調和というより、シンボリックに使うという選択肢はあるかもしれません。あくまでも馴染ます、背景に溶け込ませるという意味では、木造建築には違うアプローチが必要だと思います。
最初はマックスレイの担当者から、着色、塗装工程に入る前のスポットライトがかっこいいと聞いて、サンプルを見せてもらったのがきっかけ。やっぱりモノを見るとそのままの強さを感じたというか、すごくいいなと思いましたね。やっぱり引き算の良さっていうんですかね。そういうの大好きなんで。僕らはバリバリの商業デザイナーではないので、他のモノを転用したり、本来の目的と違った目的で素材なり、マスプロダクトを使うことも多いんですけど、そういう意味でも、原型のようなモノ。他のアーキテクトもこの素地の存在を知れば、もっと使うんじゃないかな。 また、その時は塗装工程を止めた分、価格もリーズナブルになるって魅力的な話もあって、採用の要因になりましたね。
屋外用のアルミ素地照明器具があるといいですね。屋外でアルミを使うと白錆がでます。他の建築資材でも出るものなので相性はいいと思います。溶融亜鉛メッキとか、ドブ漬けって言われるもので、雨に打たれて酸化して色合いも沈んでいくものです。そういう経年変化という意味でもうまく調和すると思います。 例えば、外壁の素材ではサイディングが主流ですが、僕らはあんまり使わずに、板張りとか、モルタルの掻き落としとかの素材を選ぶことが多いです。その時にはちょっと存在が消えるような素材として真鍮を選ぶことも多くあります。設置時の真鍮はもちろん金色ですけど、すぐに馴染んで存在感を消してくれます。そのアルミ素地版があれば、すごく使いやすいと思います。
また、アルミに飽きたらずの素地。それ以外の素材にもチャレンジしていただけたらいいですね。 既成ボディはアルミ素地のまま、例えばフードを真鍮でカスタマイズとか、そんな風に遊び心をくすぐる製品やオプションがあるといいなって思います。より素材感を強く出したいなって思うときに使えます。
今津 康夫(Yasuo Imazu)
資格: 一級建築士 所属: 株式会社ニンキペン一級建築士事務所 代表取締役 経歴: 1976年、山口県生まれ。 大阪大学修士課程修了後、遠藤剛生建築設計事務所を経て、2005年にninkipen!一級建築士事務所を設立。
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